記事番号: 1-4321
公開日 2024年05月02日
更新日 2024年08月07日
1 PFAS(ピーファス)とは
PFAS(ペルフルオロアルキル化合物及びポリフルオロアルキル化合物)は、有機フッ素化合物の一種で、1万種類以上の物質が存在します。これらの化合物は、炭素鎖の長さが異なる複数の同族体を持ち、その物性は炭素鎖の長さによって大きく変わります。物質によっては、撥水性や撥油性、熱・化学的安定性などの特性を示し、さまざまな用途で利用されています。
2 PFOS(ピーフォス)・PFOA(ピーフォア)とは
「PFAS」の一種であるPFOS(ペルフルオロオクタンスルホン酸)やPFOA(ペルフルオクタン酸)は、主に防水性や耐油性を持つ特性から、さまざまな産業で使用されてきました。これらの化合物は、特に消火剤やコーティング剤、食品包装材などに広く利用されていましたが、その環境への影響が懸念されています。
・2000年代はじめごろまで、私たちの身の回りの製品を作る際にも使われていました。
・2009年以降、環境中での残留性や健康影響の懸念から、国際的に規制が進み、現在では、日本を含む多くの国で製造・輸入等が禁止されています。
・日本国内でも、新たに作られることは原則ありませんが、分解されにくい性質があるため、今も環境中に残っています。
<主な用途>
PFOS:泡消火薬剤、半導体、金属メッキ、フォトマスク(半導体、液晶ディスプレイ)、写真フィルムなど
PFOA:泡消火薬剤、繊維、医療、電子基板、自動車、食品包装紙、石材、フローリング、皮革、防護服など
※ 住宅用消火器にはPFOS、PFOAを含有しているものはありません。また、ホームセンター等で販売されている業務用消火器もPFOS、PFOAを含まない粉末消火器が大半のため、家庭にPFOS、PFOAの使われた消火器が置かれている可能性はほとんどありません。
※ フライパンや撥水スプレー等の製品には、フッ素コートされたものやフッ素系撥水剤を用いたものがありますが、これらに用いられるフッ素樹脂はPFOS、PFOAとは別の物質です。
3 PFASの規制等
(1)国内外での規制状況
国際的には、予防的な取組方法の考え方から、POPs条約(残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約)において、PFOSは2009年、PFOAは2019年、さらにPFASの一種であるPFHxS(ピーエフヘクスエス)が2022年に当該条例の規制対象物質とされ、根絶等の対策が採られています。
また、我が国においても、「化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律(化審法)」に基づき、PFOSは2010年に、PFOAは2021年に製造・輸入等が原則禁止となる第一種特定化学物質※に指定されており、2024年2月にはPFHxSも追加指定されています。
※ 第一種特定化学物質 : 難分解性、高蓄積性及び人又は高次捕食動物への長期毒性を有する化学物質で、製造及び輸入の許可(原則禁止)、使用の制限、政令指定製品の輸入禁止等が規定される。
※ PFHxSについて、一部規定については令和6年6月1日から施行の予定。
(詳細は以下を参照してください(経済産業省HP))。
https://www.meti.go.jp/press/2023/11/20231128002/20231128002.html
<参考>
・「POPs条約」(経済産業省)
・「化審法」(経済産業省)
・「化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律施行令の一部を改正する政令が閣議決定されました」(経済産業省)
(2)環境中の基準等
2020年、厚生労働省はPFOS及びPFOAを水道水における水質管理目標設定項目に指定するとともに、暫定目標値(PFOSとPFOAの合算値で50ng/L)を定め、水道事業者等による管理をお願いしています。
この暫定目標値は、科学的知見に基づいて、体重50kgの人が水を一生涯にわたって毎日2リットル飲用したとしても人の健康に悪影響が生じないと考えられる水準を基に、安全側の観点から設定されたものです。
また、同年、環境省においても、水質汚濁に係る要監視項目に指定し、公共用水域や地下水に係る暫定目標値(指針値、PFOSとPFOAの合算値で50ng/L)を定めています。
なお、現時点で、土壌や食物に関する指針値等はありません。
※ 1ng(ナノグラム)は、1gの10億分の1の重さ
<参考>
「水質基準項目と基準値(51項目)」(環境省)
「環境省報道発表資料」(環境省)
「要監視項目」(環境省)
4 国における検討
環境省では、科学的根拠に基づく総合的な対応策を検討するため、学識経験者等からなる「PFASに対する総合戦略検討専門家会議」を設置しており、2023年に「PFASに関する今後の対応の方向性」と「PFOS、PFOAに関するQ&A集」が取りまとめられました。
<参考>
「PFASに対する総合戦略検討専門家会議」(環境省)
「PFASに関する今後の対応の方向性」(環境省)
「PFOS、PFOAに関するQ&A集」(環境省)
また、PFOS・PFOAに係る最新の科学的知見等を踏まえ、水環境に係る目標値等について検討するため「PFOS・PFOAに係る水質の目標値等の専門家会議」を設置しています。